【第3回】なぜ考えることは難しいのか - 思考の質を上げるための「問い」

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思考力を高めるカギは「問い」にある

「考える」の定義

考えるとは「問いに答えること」

「問い」と「答え」から見える4つの思考パターン

思考の4パターン

「問い」の欠如が招く問題

問いの曖昧さがもたらす弊害

A部長

Bさん、今度の新製品プロジェクトだけど、
市場調査の結果はどうだった?

Bさん

はい、市場調査の結果をまとめたレポートがこちらです
(レポートを手渡す)

A部長

(レポートに目を通しながら)
なるほど、潜在的な需要はありそうだね。
でも競合他社の動向はどうなっている?

Bさん

え、競合他社についてですか。
すみません、そこまでは調べが及んでいませんでした。

A部長

そうか。あと、想定価格帯はどうなっているの?
製造原価を考えると採算は取れそう?

Bさん

価格帯についても、まだ具体的な算出はできていません。
申し訳ありません。

A部長

わかった。じゃあ、早急に追加調査してくれ。
それから、自社製品の優位性をアピールするための
販促戦略についても考えをまとめておいてほしい。
できるだけ早めに頼むよ。

Bさん

承知しました。頑張ります。

問いへの意識不足が引き起こす議論の停滞

現状認識、問い、主張(答え)の整理表
ファシリテーター

今の議論を聞いていると、既存と新規どちらの顧客により注力すべきか、という点で意見が対立しているように見えます。しかし、本質的にはサービスに対する認識の差が根底にあるのではないでしょうか。Cさんは『サービスそのものに問題がある』と考え、Dさんは『サービス自体には問題がないが、その魅力が伝わっていない』と考えているように感じました。まずは、この点について認識を合わせる必要があると思います

ファシリテーター

今の議論を聞いていると、Cさんは既存顧客の満足度を上げることを重視し、Dさんは新規顧客を獲得することを重視しているように感じました。つまり、売上目標達成のために、既存顧客と新規顧客どちらにより注力すべきか、という問題について議論しているのだと思います。お二人ともこの認識で合っていますか?

質の高い問いを設定するためのポイント

おわりに

この記事では、「考える」を「問いに答えること」と定義し、問いを意識することの重要性について解説してきました。

私たちは日々、様々な思考を巡らせていますが、その多くは漠然としており、明確な問いを意識していないことが少なくありません。そのため、考えているつもりでも、なかなか考えが深まらないのです。この記事では、そうした状態を「思う」と表現しました。「思う」の状態から脱却するためには問いを明確にすることが重要です。

特に、ビジネスシーンにおいては、問いが曖昧だったり、問いへの意識が欠如していたりすることで様々な問題が生じます。会議での議論が平行線をたどったり、本質的な問題解決に至らなかったりするのは、そうした「問いの欠如」が原因であることが少なくありません。

建設的な議論を行うためには、議論の冒頭で、各自の現状認識や問いの設定(問題設定)を共有することが有効です。表面的な意見の対立ではなく、その背景にある問いの違いに目を向けることが、議論を建設的な方向へと導くのです。

そして、より良く考えるためには、問いの質を上げることが重要です。良い問いとは、具体的であり、背景が明確なものです。このような問いを立てることで、考える方向性が定まり、適切な答えを導き出しやすくなります。

ビジネスにおける問題解決は、多くの場合、複数の人が関わる協働作業となります。そのため、問いを立てて共有し、それを役割に応じて分解・具体化していくことが求められます。チームメンバー全員が同じ問いを共有することで、アクションの方向性を揃えることができるのです。

「考える」を「問いに答えること」と捉え直し、問いを意識する習慣を身につけることで、考える力を養い、問題解決力やコミュニケーション力の向上に繋がります。日々の生活やビジネスの中で、自分が向き合っている問いは何なのかをぜひ意識してみてください。そうすることで、より深く、より質の高い思考ができるようになるはずです。


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